新世界から 2020 5 10

「二つの未来」
 未来は、時には重なり合い、時には分岐している。
未来を分けるものは、人々の集合想念である。
集合想念が人類の未来を分岐させる。

「あれは、何だったのか」
 世界を恐怖のどん底まで追いやった新型ウイルスは、
跡形もなく消えて、2020年の後半は、経済のV字回復を目指す年になった。

「もう、元の世界には戻れなかった」
 2030年には、多くの人々は、
2019年までの世界を「旧世界」と呼び、
2020年以降の世界を「新世界」と呼ぶようになった。
人々の生活スタイルが変わり、価値観も不連続なものとなった。
 もちろん、生活スタイルの全部が変わったのではなく、
生活の半分は「旧世界」のままであり、残りの半分が「新世界」へ移行した。
 他人との接触を避け、他人との接触は仮想空間が原則とされた。
フェイスブックは、時代の先駆を示したと言われた。
 実体経済を現すダウ平均株価は低迷して、
仮想空間産業が集結するナスダックは史上最高値となっていた。
 2020年、世界に広がったウイルスは、
当初、パンデミックと呼ばれたが、それは始まりにすぎなかった。
 仮に感染しても、多くの人が無症状のまま治ったので、
それをパンデミックと呼んだのは、現在、拙速だったという評価が固まっている。
 今では、ウイルスの初期型が、肺炎や下痢程度で済んだので、
そういう評価をする人が多くなっている。
 旧世界で人気があった野球で言えば、
1回目のパンデミックは、1回の裏が終わったようなものだったという。
 当時、若者だった中年は、
「昔は、居酒屋で、唾を飛ばしながら、議論した」という。
 今の若者は、「ずいぶん危険なことをやっていた」と思う。
今の技術では、その唾に、ウイルスが200万個以上も検出されていて、
話ながら唾を飛ばす行為は、政府が指定する「禁止行為」になっている。
 2021年が「終わりの始まり」、
いや新世界へ移行しなければならない年になった。
 いったん終息したかのように見えたが、
ウイルスの派生型が、あれほど「高病原性」になるとは、誰も予想しなかった。
 肺炎を引き起こす病気と見られていたが、やがて本性を現すようになった。
ウイルスがすべての血管を攻撃するようになったのだ。
 この攻撃によって、大量の血栓が作られるようになった。
血管が集中する臓器、いや毛細血管が集中する臓器は壊滅的な被害を受けた。
 世界人口の10%が失われた時、
当時のアメリカ大統領は、「国境を厳格にしろ。鎖国をしろ」と叫んだが、
誰も聞く耳を持たなかったが、10%から20%へは、あっという間だった。
 「分断化された世界」、それが「新世界」だった。
人々は、グローバリズムを不吉な言葉として記憶することになった。
グローバリズムが、風土病に過ぎなかった疫病を全世界に広めてしまった。
 21世紀初頭は、グローバリズムは経済を発展させる手段だと見られていたが、
今となっては、人類を滅ぼす手段に変わってしまった。
「つながりすぎた世界」、それが旧世界を象徴する言葉となった。






















































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